今回、取材させていただいたのは岡山市北区でコールマンを栽培されている『みのり農』の角南さんです。昔は地区で盛んに栽培されていたコールマンのブドウですが、高齢化でどんどん栽培数が減ってきました。それを絶やすまいと減薬農を目指して栽培されています。

コールマンを栽培しようと思われたきっかけは何ですか?

お嫁に来た頃、義両親が11棟の温室でコールマンを栽培していました。コールマンは大正時代から続く岡山の冬の葡萄で、とても歴史があり、全国でも高いシェア率を誇っています。種ありですが、昔ながらのあっさりとしてジューシーな美味しい葡萄です。近年はシャインマスカットやその他の新品種人気や生産者の高齢化の影響で栽培をやめてしまう人が年々増え、すっかり存在が薄くなってしまいました。昔ながらの葡萄が姿を消して行く中で、少しでも長くコールマンを残していきたいとの思いで、高齢を機に葡萄栽培を縮小する義両親から栽培を頑張ってやってみようかとコールマンの温室2棟のうち1棟を引き継ぎ、もう1棟は野菜の栽培に切り替えました。

みのり農さんのハウス2棟

4月のコールマンの様子

コールマンの好きなところは?

あっさりした甘さとジューシーな所です。コールマンは冬の葡萄で(11月〜12月)、コタツ葡萄と言う異名を持っていますが、ちょうどお歳暮の時期と収穫が重なり、贈答品としても喜んでいただけます。関東に住んでおられる知り合いの糖尿病の方が他のブドウをを食べたら、三、四粒で血糖値が急上昇したそうなのですが、コールマンだったらそこまでではなかったそうです。近くのスーパーに探しに行っても無かったから来年も送ってくださいと言われました。岡山でもなかなかスーパーで見ることはないのに、関東にはないですよね(笑)

コールマン栽培に対するこだわりはありますか?

栽培を始めてからまだ長くはないので、今まで義両親がやってきた慣行農法で葡萄の栽培を覚え、それからは自分のやり方(減農薬)でできたらと考えていますが、まだそこまでは至っていません。今はひとりで1棟のコールマンを育てています。無になって黙々と作業をするのが好きです。いろいろな考え事もその時にするのですが、音楽もしゃべり声も聞かず黙々とコールマンと向き合っています。

コールマンの栽培数減少は高齢化とシャインマスカット

コールマンは栽培期間は元肥施肥からするとざっと1年間です。実が柔らかい為に熟れると腐れが発生し、それを取り除く作業もありとても手がかかります。温室も古くなっていく、作っている人も高齢になっていく、後継ぎがいない、シャインマスカットが売れる…という感じで30年くらいの間にコールマンを栽培する人がどんどん減っていきました。実が柔らかいので腐りやすいのですが、腐った実を取り除いていくなどの作業が多いのも、生産者が減った要因ではないかと思います。

太い枝からでている芽を棚に誘引していきます

コールマンの成長過程を教えてください

土作りはブドウを全部取り終わった1月くらいから始めます。木の根元から少し離れたところに、根を傷つけないように肥料をまきます。花が5月下旬くらいに咲きます。1週間くらい咲いているのではないかと思います。今は支柱の棚に誘引する分の枝を2つ伸ばしていますが、太い方か強い方どちらかを最終的に選んで残します。基本はひとつの枝から1房です。丈夫そうな枝からは2房とることもあります。ブドウの花は普通の花のようなイメージではなく、めしべのようなイメージです。実がなるのは6月くらいには青い実がなります。青い実の時に粒間引きをします。それがぐんぐん大きくなって、9月くらいに色がついてきます。収穫は11月の中旬以降です。9月に色が付き始めるとつまみ食いをしてみますが、まだ甘みはさほどありません。義両親がシャインマスカットも路地物で育てていますが、それは9月くらいに収穫となります。シャインマスカット栽培を拡大している周辺の農家さんも出荷を始めます。
ブドウは朝と夜の気温差で色がついてくるので、ここ最近の猛暑で色付きに深みがなくなってきていると思います。でもコールマンは色によって甘さにさほど違いはないと思っています。色付きを良くするために薬剤を使う方法もありますが、私は銀色のシートを地面に敷いて太陽光を反射させたり、葉っぱを除けて葡萄が日差しに当たるような作業をする事で葡萄の色に深みを持たせていく事に努力しています。

コールマンの蕾 これから花が咲きます

花が咲いた様子がこちら!

どのくらい収穫ができましたか

自分で栽培を始めて、昨年が初めての収穫でした。600房はJAに出荷しました、残りはお客様から直接ご注文いただいたり、農産物取扱店に出荷させていただきました。市内小学校の学校給食にも提供させていただきました。

野菜は何を育てていますか

私のもう一棟のハウス内では大根やスイスチャード、ロメインレタスを育てています(取材の時点では)。マツコの知らない世界でロメインレタスが紹介されてからよく売れるようになった気がします。スイスチャードは香りが苦手な人もいますが、おいしいです。サラダだと小さいうちに食べる方がやわらかくて好きなので、小さいうちに出荷します。

ハウス内で育てているロメインレタス

外の畑には義父が育てているみかんの木もあります。自宅で食べるのと産直にも出しています。他にも変わり種としては緑色のルバーブを私の実家の畑で栽培しています。5月の末からは桃の袋掛けが始まるので、忙しくなります。

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フキに似ているルバーブ

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主にジャムに加工して食べる事が多い

趣味はありますか

食べることも好きで、食べ歩きもします。他にも韓国ドラマを見ることが好きですね。韓国ドラマに出てくる食べ物にも注目しています。

外の畑 みかんの木もあります

将来の夢を教えてください

将来、大きなことは考えていないのですが、今ある畑を区画割してシェア畑にできたらと思っています。我家のシェア畑で野菜を育ててくださった皆さんと農園マルシェのようなイベントを開き、野菜を作る楽しみを共有できたらと夢見ています。

スイスチャードも育っています

お話を聞いて感じたこと

人生経験を経て、農業に魅力を感じるようになったとおっしゃる角南さん。コールマンへの思いが伝わって来ました。筆者の実家は角南さんの近くにあり、小さい時はこたつの上にみかんとコールマン!という感じでよく食べていました。いつの間にかなくなっていて寂しく思っていたので、今回お話を聞きいろいろな要因で生産数が減っていたと知り驚きでした。収穫までの工程も長く大変だとは思いますが、おいしいブドウを絶やさずまた気軽に食べれるようになれるよう応援していきたいと思います。

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